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第31回
指しゃぶり4 吸指癖の後遺症(習癖防止装置と筋機能療法)

日常生活のなかで本を読んだりテレビをみているときに口をポカーンと開け、上下の歯の間に舌を出していたり、飲み込むときに舌を突き出し歯を押すような動きをすることを舌癖と呼びます。舌癖は口を開けて息をする口呼吸や吸指癖が原因で発症します。お話をしているときも唇の間から舌がみえ、舌たらずな発音になり歯並びに悪い影響を与えます。開咬により通常の飲み込みができなくなると舌癖のなかの一つの異常な嚥下癖(えんげへき)が発症します。異常嚥下癖は飲み込む際に噛み合なくなった上下の前歯の隙き間に舌が前方突出して飲み込む悪い習癖です。食物だけでなく、飲み物や唾液を飲むときも舌が前方に突出して飲み込むようになります。吸指癖がなくなれば開咬は自然に治癒することが多いのですが、吸指癖の期間が長く、異常嚥下癖を併発した状態では開咬の自然治癒は望めません。唾液などを無意識に飲み込む動作を嚥下と呼び、私達は一日に600〜2000回も嚥下運動をしています。舌は筋肉の塊ですので、舌が上下前歯の間を常に前後する状態となり骨の変形はさらにひどくなり、全顎の矯正治療や全身麻酔による顎骨の離断手術を併用して行わなければ治すのは難しくなります。
写真は吸指癖を長く続けたため顎の骨が変形してしまい開咬と異常嚥下癖を生じてしまった小学4年生の口腔内写真です(写真1)。写真左右の奥歯は上下で咬んでいますが前歯は骨が変形しているため咬むことができません。来院時の状況は、日中では吸指癖はしなくなったが寝るときはまだ無意識でするとのこと。嚥下時では唾液や食物を飲み込む際、舌の前方突出を伴う異常嚥下癖が発症しています。
まずお口の中に取り外せる床型装置を装着しました(写真2,3)。装置には金属製の柵が付いていて、無意識に指が口の中に入れる事を邪魔する使用になっており、さらに舌が前方に突出するのを防止する役目をもっています。この装置と舌のポジショニング練習用のマウスピース(写真4)を併用し一年の期間をかけて異常嚥下癖を除去する筋機能療法を行いました。(写真5)筋機能療法は正常な飲み込み動作(嚥下)を獲得する筋肉のトレーニングで家庭での長期間に渡る毎日の練習が必要になります。保護者の方のサポートが得られなければトレーニングをすすめることができません。
開咬の詳細はコラム28指しゃぶり1を参照下さい。


参考文献について
  • 黒須一夫:現代小児歯科学基礎と臨床,医歯薬出版,東京,1987
  • 町田幸雄:乳歯列期からはじめよう 交合誘導,一世出版,東京,2006
  • 山口秀晴 監修:きれいな歯ならびと口もとのみちしるべ-指しゃぶりをみまもる時期、はたらきかける時期-,わかば出版,東京,2005
  • 山口秀晴 監修:知っててほしい 歯科矯正治療の基本,わかば出版,東京,2008

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